2年生の油画選択は自分で選んだモチーフを描くという課題でした。予備校や大学など油画科では当たり前のようにやることですが、表現の幅や可能性を広げるため油彩やデッサンに限らず様々な素材でドローイングや制作を行うことがあります。違う素材でのアプローチからこれまでと違った捉え方や視点で考えて、油彩も含めた表現の幅や表現力を高めるきっかけにしていくことが狙いです。今回の課題でも油彩の前にまず素描(木炭)、コラージュを制作していきましたがこれまでと違う発見が個々の中で少なからずあったかと思います。普段自分が意識できていなかったことに目を向けるきっかけにはなったのではないでしょうか。
では制作した作品をいくつか紹介したいと思います。
●素描(木炭)
羽のふわふわした質感と木炭の特有の浮いた調子をうまく絡ませながら描いています。やや暗めの調子からのじわじわとした描きおこしが見ていてしっくりとくる感じがします。光をさらに感じながら体のボリューム感を出す稜線部分をもう少し強く意識して描き出してみましょう。
貝から滲み出る不気味な存在感をしっかりと描き上げていますね。木炭の色調も豊かです。ツルっとしているところ、ザラザラしているところ、渦巻いている形やぎざぎざした輪郭、ボリューム感やスケール感など拾える要素の多いモチーフだけにどの要素をより強調してそれを背景も含めた画面の雰囲気とどう結びつけていくかが強い画面作りのカギになりそうです。
●コラージュ
明度だけでなく全体の色調や彩度もうまくコントロールされていて色感の良さが伺えます。ただこのモチーフ単体だけだとやりとりや密度がどうしても単調になりがちです。例えば木の桶の近くにもう少し小さいモチーフなどがあったりした方がより床の臨場感や絵の緊張感を作りやすかったかもしれせんね。
やりとりが多く、選んでいる単位にも単調ではないリズムの良さを感じます。状況の見え方は決して悪くはありませんが、モチーフが置かれている台?のようなものだけがいまいち具体性を持たせられていないせいで構図もまだ悪く見えてしまうところがありますね。置かれている台をもう少し具体的にしっかり見せられれば全体の見え方も変わってきそうです。
●油彩
モチーフのたたずまいや存在感をしっかり感じます。強い色味のモチーフに引っ張られすぎることなく適度な彩度に押さえながらよく球体の形体やガラスの質感などを表現できています。手毬とピッチャーの重なっているところの意識が弱く前後関係が弱く見えるところと、床から背景への移り変わるところがあいまいな処理になっているのが惜しいところですね。
奥から手前に向かってくる空間表現がよくきまっています。茶系でまとめた色調の中ですがそれぞれで似過ぎることもなく色味の違いも見え、手前と奥の描写の描き分けといったデッサン的なところも意識できるようになってきました。カゴから葡萄にかけてやや暗さが似ていたり影が何となく沈みすぎたりして見づらくなっているところが少し惜しい点です。
やや彩度抑え気味の繊細な質感描写のモチーフに対して、彩度高めの強いマチエールの背景が対比としてよく効いています。形のきわに対してもやりとりが複雑になってきましたが木の桶周辺の仕事の単調さが少し目につくので形の回り込みはもちろんモチーフの奥に回り込んでいく床の回り込みなどにも意識を向けてみましょう。
剥製の通常描きどころとなりそうな顔をあえて外して後ろ姿を描いたところに描きたかったイメージやこだわりがありそうですね。足下から土台の木にかけての描写は力強く猛禽類の鋭さを十分に感じさせてくれます。気になる点は一番手前に向かってきている翼の状況が見えづらいのと、ところどころ形のきわ周辺を締めるような鈍い暗さが空間や形のつながり、絵の動きを止めてしまう印象があるところです。
以上油画の選択課題でした。
今後も油絵を描く場合は今回のことを活かしつつさらに自分にあった表現を探ってみましょう!